「や、これは。おはようございます。今日はお休みですか?」「そうなんですが、家にいても、こうして女房に追い出されるわけでして。節電でエアコンもなにもかも電源が抜かれてますしね。結局、いつも乗っているこの電車にいるのが一番落ち着くんですよ」「私もなんです。環状線だから終点はないし、足が疲れるまでつり革につかまっていれば、涼しい風に当たっていられますしね」「通勤でも、何となく毎日同じ吊革扇風機を選んでしまいませんか?」「そうなんです。違う人が使ってるとムッとしたりして」「つり革のゆるみ具合に好みがあるのかも」「そこがエアコンにはない醍醐味ですね」「微妙に強弱をつけることが出来る機械って意外と少ないですもんね。あ~、愛しいなぁ。持って帰りたい!」「壊しちゃだめですよ…」
【作】 岸本陽子 京都精華大学マンガ学部 マンガ学科カートゥーンコース4年生
【評】 ヨシトミヤスオ 京都精華大学芸術学部・ 教授