「お母さん。目がしみるよう」「痛くても我慢して走りなさい。酸性雨に濡れると、アンタのチョボけたトゲなんかすぐ溶けてしまうんだから。地球上の砂漠面積が広がって、確かに私達サボテンは他の植物に比べたら生きやすくなったけど、まともな雨が降ってくるのは今や数年に一度。あとは酸性雨が地中に沁みている間にうまく酸性がやわらげば、そこでやっと水分を吸い上げることができる程度なんだから。こうして砂漠の中を酸性雨をよけて移動することができるなんて、昔の植物には考えられないことなのよ」「僕、生まれた時から歩けたよ」「これも進化なのかしらね。あっ。雨雲が近づいてきたわ。サァ、走るからついてくるのよ」「ウエ~ッ」
【作】 鄭 仁敬(チョン・インギョン) 京都精華大学美術学部3年生
【評】 ヨシトミヤスオ 京都精華大学芸術学部・ 教授