いいから、そこをのいて下さいよ。どうせ外の海にいたって死ぬほど苦しいんですから。わかりますでしょ?誰がこんな海にしちまったんだと思ってるんですか?あなた方人間の所業じゃないですか。まぁ今更もとの海を返せと言ったところで無理だし、全国の水族館で希望者は死ぬまで面倒を見てもらえるというから、ちょっとはマシなところもあるのかと思えば、まぁ、どこもかしこも門前払い。計画性がないのにも程がありますよ。水槽の中に入っても苦しいだけだって?そんなのここから見たってわかりますよ。そう思うんなら、ビニールプールでも何でも用意しなさいよ。私たちは最後にきれいな水をエラに入れるまでは、ここを動きませんからね。なに?近くの魚屋の生け簀なら空いてるって?それは・・・う~ん。
【作】 丹羽麻里子 京都精華大学芸術学部 マンガ学科カートゥーン・マンガコース4年生
【評】 ヨシトミヤスオ 京都精華大学芸術学部・ 教授