「聞いたで。伐採作業、中途半端に終わらせてきて、主任に怒られたらしいな」「残したいうても、一本やけどな…」「そないデカイ木か?」「そやない。その木にな、女の全身像が描いてあってな、じ~っと、こっちを見てたんや」「そんなん誰かのイタズラやろ。気にしてたらあかんがな」「主任にもそう言われたんやけどな…その顔が、似てるんねん」「誰に?」「おまえも知ってるやろ。学生の時に付きおうてたコや。結局、別れてしもたけど、えぇコやったんや。やさしゅうて、スタイルよぉて…」「そんなん、そのコかて今は普通のおばはんになってるがな。がめつぅて、肥えてて、口のうるさい…」「エライひどいこと言うなぁ。そんなんわからへんやろ」「わかる」「なんでや」「そのコが、今のオレの嫁はんや」「…!」
【作】 岸本陽子 京都精華大学芸術学部 マンガ学科カートゥーン・マンガコース3年生
【評】 ヨシトミヤスオ 京都精華大学芸術学部・ 教授