「じいさん、いつまでそうやって頑張る気だ?いいかげん、古い好みに固執するのをやめないとカラカラに干からびちまうぜ?」「忠告はありがたいがな、わしはそんな人間の匂いかプンプンするガラクタより、自然の巻貝が欲しいんじゃ。ここがきれいな海に戻りさえすれば、魚も貝も元どおり生きられる。わしらヤドカリも、本来の姿に戻れる」「って、そんな今さら…あんな青藻やらフジツボやらがくっついた重い貝殻なんざ、俺たちはゴメンだね。軽くてスマートでおしゃれで割れない、こんないい家を何で手放す必要があるんだ?この浜辺にいれば、そんな家が選び放題だぜ」「そのうちおまえたちにもわかるさ…人間は身勝手だからのう。さて、わしは少し砂にでも潜っとるよ。明日は海開きか‥また変な仲間か増えそうじゃなぁ」
【作】 大出裕香子 京都精華大学芸術学部 マンガ学科カートゥーン・マンガコース3年生
【評】 ヨシトミヤスオ 京都精華大学芸術学部・ 教授