いやあ、女将。やっぱりこの料亭で観る送り火は最高だな。これに勝る酒の肴はないネ。しかし、なんだな。どうして今年に限ってこう、窓という窓を閉め切っとるんだね。窓を開けて夜風を入れてくれ。せっかく京都まで来たんだ。鴨川の匂いも嗅いで帰りたいしなあ。なに、とても臭くて開けられない? 今晩だからこそ無理? どういうことだ? この双眼鏡で見てみろだと? ん?なんじゃ、これは。ゴミを燃やして先祖を送るとは大胆というか失礼というか…人のモラルもここまで来たか。それにしても、「夜目。遠目。傘の下」とはよく言ったもんじゃ。遠くから眺めている分には十分美しかったのに。女将にも、あんまり近づかん方が無難かのう。
【作】 田子左季子 京都精華大学芸術学部 マンガ学科カートゥーン・マンガコース4年生
【評】 ヨシトミヤスオ 京都精華大学芸術学部・ 教授