お若いの。そんなに露骨に驚いた顔をせんでもよかろう。確かにのう、その手にもっとる案内書を頼りにここまできたんじゃろうから、おまえさんの気持ちも判らんではないがの。ワシとて好きでこんな姿を見世物にしとるわけではない。これでも創られた当時は「萌黄色の乙女」という作品名そのものだったんじゃ。その案内書の写真どおりののう。じゃが外に置かれたことが不運の始まりじゃ。年々、ワシは雨に打たれる度に少しずつ体型が崩れてきた。雨の酸性度数があがってきたんじゃ。そして、いつの間にかこんな姿になり、誰もワシを美しいとは言わんようになった。なに、人間と同じになったということじゃ。おまえさんの自慢の彼女もいずれはこうなる。覚悟するんじゃな。
【作】 森田 恵 京都精華大学芸術学部 マンガ学科カートゥーン・マンガコース2年生
【評】 ヨシトミヤスオ 京都精華大学芸術学部・ 教授