母上様。お元気でいらっしゃいますか。私がこの寺に身を置いてから早いもので明日で丸2年となります。半人前ではありますが、何とか諸先輩たちの足手まといにならぬよう作務と修行に励む毎日でございます。 昨日は初めて一人で庭にホウキ目をつけることを許されました。この寺の庭は広大な枯山水なのです。母上もご存じのように地球の99%が砂漠になった現代において、海は全人類の憧れです。ほとんどの人が見たことがありません。しかし昨日、私は自分が描いたホウキ目の上に確かに海を見ました。波と波紋と島がそこに現れたのです。人の心とは不思議です。自然を壊しながら自然を求め続けます。母上様も一度、見にいらしてください。お待ちしております。
【作】 清水貴子 京都精華大学芸術学部 マンガ学科カートゥーン・マンガコース3年生
【評】 ヨシトミヤスオ 京都精華大学芸術学部・ 教授