ようし、そのままゆっくり運べ。揺らすんじゃないぞ。高精度の瞬間冷凍技術で凍らせてあるんだ。その分、樹木全体が薄氷同然にもろくなっているからな。この時代の人間どもはまだ気づいとらんようだな。この木の一本一本が、将来どれだけ素晴らしい価値を持つかを。我々が住む2200年代では、人間がバイオ操作していない生物など皆無だ。細菌やウィルスさえ人間が支配した。だからこそ、自然の力のみで成長した生物は限りなく貴重で美術品に近い。金持ちが先を争って手に入れたがると言うわけだ。どうせここに生やしていても、いずれ切り倒される。時空フライトで我々と来たほうが、この木達も幸せというもんだ。さて、オークションに遅れるといかん。急ごう!
【作】 大藤 恵 京都精華大学芸術学部 マンガ学科カートゥーン・マンガコース3年生
【評】 ヨシトミヤスオ 京都精華大学芸術学部・ 教授