この北限の地グリーンランドに来てもう5年か。親父のペンキ屋を引き継いだものの、今や日本の土地の約半分は海の中。仕事も住むところも限界がある。その点、このグリーンランドはまだまだ人口密度も低いし、何より地元イヌイットの人達がこのペンキ塗りの仕事を必要としてくれているからな。それにしてもここの人たちは偉いよ。意地でも自分たちの文化を守っていこうっていう誇りがあるよ。今の時代、子供達に氷の色を教えてやれてもその冷たさまでは伝えられない。それでもこうして昔ながらの白い家にこだわり続けてるんだからなぁ。5年間炎天下での同じ仕事ばかりで、少々飽きもきてるが、もう少し踏ん張ってみるか。そのうち山も白く塗って、雪見でもするかな。
【作】 玉本 智鏡 京都精華大学芸術学部 大学院1年
【評】 ヨシトミヤスオ 京都精華大学芸術学部・ 教授