「そうですか。お子さんが外の景色を見てしまわれて、それで熱を出されたわけですね。いや、ご心配いりません。若いお母さんにはありがちでね。つい、ウインドウモニターのテープ切れに気が付かないんですよ。まあ、いつも見慣れた美しい庭景色から、急に本当の地球を見ますとね、我々大人でもあんまりいい気分ではないですから、お子さんには刺激が強すぎただけです。さて、とりあえず過去2時間分の記憶削除ということでよろしいですかね。少々手間とお金がかかりますが、このままの育児プログラムで立派な自然児に成長すれば、優先的に火星留学できますから。がんばりましょう!」医者はそう言って、額の三ツ目を大きく見開いた。
【作】 真忠聖恵 京都精華大学芸術学部 マンガ専攻4年
【評】 ヨシトミヤスオ 京都精華大学芸術学部・ 教授