1998年
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 「青虫の恩返し」

愛は国境だけでなく、ついに生物間の違いをも越える…かも?

お嬢さん、元気を出して。ほらね、この葉っぱだけは大丈夫だよ。このところの気象変動で、まともに成長する植物なんてほとんどない。僕ら昆虫族だって壊滅に近い。それが全部、人間のせいだなんて頭にくるよ。でも君は僕がまだ卵の中にいるとき「殺虫剤のかかる畑じゃかわいそう」って言って、僕をわざわざ空き地の草むらに置いてくれた。あの空き地もすっかり砂場になっちゃったけど、僕は君を忘れなかった。君が病気でずっとベッドにいることや、窓から見える木の葉に望みを託して毎日過ごしていることを聞いたんだ。今度は僕が君を励ますよ。見てて。僕、ここで葉をくわえたままサナギになるよ。春になったら、また逢おうね。


【作】
山本なおみ
京都精華大学美術学部
マンガ専攻3年

いつも、人間の内面的な矛盾を表せていけたらと思いながら作品を描いています。もちろん絵柄のオリジナリティにもこだわって、ちょっとリアルさがにじみでるよう工夫してます。

【評】
ヨシトミヤスオ

京都精華大学芸術学部・
教授

緑がなくなりつつある様子をどう表現するかを、O・ヘンリの「最後のひと葉」をパロディにもって来たのはよかった。本当に最後に一枚になってしまうのか? 絵にも品があるね。
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