「課長~。噂には聞いてましたけど、この課いいですね~。人事異動されてきて良かったですう」「何いっとるんだ。毎年夏になるたびに、海から上がって来てはここまで訴えに来るんだぞ。たまったもんじゃないよ」「でもあの人魚たちにとったら、そりゃあ海が汚れるのは死活問題ですよね。ゴミだけじゃなくて雨は酸性雨になってくるし、紫外線は年々強くなるし。身近な人間に文句のひとつも言いたくなる気、わかるな~」「同情するのは勝手だがな、役所としてはもうこれ以上はどうもできんよ」「冷たいですねえ。あ~あの白い肌が紫外線でシミだらけになったりしたら、もったいないなあ」「夢を壊すようだがな、あの人魚たち、とうに二百歳を超えとるからな」「あ…そうですか」
【作】 森田 恵 京都精華大学芸術学部 マンガ学科カートゥーン・マンガコース4年生
【評】 ヨシトミヤスオ 京都精華大学芸術学部・ 教授