おやぁ。せっかく大気圏ぎりぎりまで苦労して登って来たってのに、もう積乱雲にならなきゃなんないのかい。どうもここんとこ、せわしないねぇ。水不足も甚だしいったらありゃしない。もともとあたし達「雨粒」としちゃあ、何もあんな汚い人間界になんか降りたくなかったさ。空気は臭い。沁み込む土に汚染されてる。二酸化窒素や大気中の汚れが頼みもしないのにベタベタとくっついてきて「酸性雨」になりたがる。そんなこんなで真っ黒になったあたし達を、人間達はあの手この手で浄化して飲もうとする。それも先を争ってね。できることなら近づきたくない下界だけど、まぁ…最近はちょっと反省してるようだ。しょうがない、もうひと降りしてやろうかね。心して飲みなさいよ!
【作】 朴 智慧 京都精華大学芸術学部 マンガ学科カートゥーン・マンガコース3年生
【評】 ヨシトミヤスオ 京都精華大学芸術学部・ 教授