「やれやれ、だいぶ登ってきたな。ばあさん大丈夫か?」「ええ、おじいさん。おかげ様で痛む足ももうありませんしね。おじいさんこそ腰は大丈夫ですか?」「なあに、まだまだ。しかし墓に入ってまで安心しておれんとは。これというのも、先祖代々檀家であった寺が、あんな工場に土地を売り払ってしまったせいじゃ!」「しょうがないですよ、おじいさん。今や日本の人口は100人足らず。しかも半分以上は海外暮らし。私達の子孫も今どこでどうしているのやら」「嘆かわしいのぉ。何とも寂しい限りじゃなぁ」「おじいさん、私はいつまでもついて行くますから元気だしてくださいよ」「うんうん。まったくじゃ。これからも二人、手を取り合って仲良く生きていこうな」「…もう死んでますよ」
【作】 吉川 貴子 京都精華大学芸術学部 マンガ学科カートゥーン・マンガコース3年生
【評】 ヨシトミヤスオ 京都精華大学芸術学部・ 教授