なんべん来られても、ワシはこの車は手放さへんで。この町内で買うてへんのはウチだけやて? かまへん! 世界中でウチ1軒になったかて、船なんか買わん。ちょっと南極の氷が溶けるスピードが早うなったて、政府が発表したとたん、猫も杓子も顔あわしたら日本沈没の予測と新性能の自家用船の話や。そんなん、地球がぬくうなってるて話、ワシらの親が子供の時代から言われてたがな。ほんでも「何とかなるわい」とタカくくって、快適優先でワシらは生きてきたんや。今更ジタバタしたら、お天とさんにも、この愛車にも顔向けできんわ。なんでそこまでこの車にこだわるんかて? ワシはこの車造った車メーカーの社長じゃ。おまんらのせいで潰れたけどな!
【作】 川崎 明子 京都精華大学芸術学部 マンガ学科カートゥーン・マンガコース3年生
【評】 ヨシトミヤスオ 京都精華大学芸術学部・ 教授