「早いものだねぇ。ここで暮らしてもう10年か。いよいよ明日は久々に地上の空気が吸えるな」「あたし初めてだし、ドキドキする。地上ってすごく眩しいんでしょ?」「そうねぇ。あなたはここで生まれたんですものね。あの頃の地上は汚れきっていたけど、こうして人間が地下生活を送るようになって、少しずつでもきれいになってるはずよ。人間が外に出られるのは、10年に一度1日だけっていう規律を守っているから」「昔の人間てそんなに悪かったの?」「便利さを追求しすぎたんだ。大事なのはみんなで、バランスよく仲良く生きてゆくことだって気付くのに、時間がかかったんだね。さ、明日は早いからもう寝ような」
【作】 中川 愛 京都精華大学芸術学部 マンガ学科カートゥーン・マンガコース3年生
【評】 ヨシトミヤスオ 京都精華大学芸術学部・ 教授